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学校事故の具体例

(はじめに)
 ここでは、学校(保育園、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、高等専門学校、大学、養護学校、特別支援学校など)における事件や事故などの事例を紹介します。
 学校事故に関する訴訟は、学校側の安全配慮義務違反の有無が主要な争点となります。
 学校事故に関する訴訟を提起するかどうかを検討するためには、過去の裁判例や個々の事案における事実関係を丁寧に整理・分析する必要があります。
 

(学校事故の具体例)

<保育園・幼稚園における事例>
  ・園庭にある遊具使用中の死亡例
  ・熱湯をあびて火傷した事案
  ・運動会中の転倒による後遺障害事案
  ・用水路に転落して死亡した事案
  ・プールでの溺死事案
  ・熱中症による死亡事案
  ・うつぶせ寝による死亡事案
  ・園児が首に縄をつけたまま滑り台を滑り降り死亡した事案
  ・園庭で落雪に巻き込まれて死亡した事案
  ・遊戯中の誤飲による死亡事案
  ・昼寝中の顔色の変化に気付かず死亡した事案

 保育園や幼稚園の事故では、園児等の安全確保措置やその動静を常に把握する義務に違反したかどうかが争われることが多い。
 偶発的で予見し得ない事故の場合、園側の責任が否定されやすい。しかし、幼い園児がどのような行動を取るか分からないことは、事前に分かっていることでもあり、「予見し得ない」といえる場合は限定される。


<小学校における事例>
  ・水泳指導中の溺死事案
  ・体育のバスケットボール中の心肺停止事案
  ・鉄棒からの落下による死亡事案
  ・リレー中の心停止事案
  ・教室移動中の階段からの転落死事案
  ・算数授業中の突然死事案
  ・校庭から出たボールを追いかけ交通事故死した事案
  ・バレーボール終了後の突然死事案
  ・体育でジョギング中の突然死事案
  ・組体操中の落下による死亡事案
  ・修学旅行中の転落による死亡事案
  ・給食中の食物アレルギーによる死亡事案
  ・食中毒による重症事案
  ・休憩時間中、小学生同士がけんかして失明した事案

 小学校では、授業時間における事故、授業時間以外(放課後、クラブ活動、校外での活動など)における事故や放課後などにおける小学生同士の事故(学校側だけでなく、加害者側の親権者の責任となる場合がある)などもある。
 偶発的で予見し得ない事故の場合、学校側の責任は、否定されやすい。
 また、学校側の責任が認められた場合でも、生徒の側の過失が認定され、賠償額が減額となる場合も多い。
 一方で、4段ピラミッドなどの組体操を実施する場合など、転落などの危険があることが事前に分かる場合は、学校に課される安全配慮責任は大きく、学校側の過失が認められやすい。
 修学旅行や林間学校など校外における学校行事の場合、引率する教員が少なく、不測の事態の起こりやすいことから、学校側には高度の注意義務が認められる場合が多い。一方で、生徒の側も通常は予測できない行動をとった結果、事故に巻き込まれた場合は、生徒側の過失が認定されることも多い。
 給食中の食物アレルギーなどの事故は、生徒や保護者側から、どの程度学校に情報提供があったかによって、学校側の責任が判断される傾向にある。学校が普段の様子からも食物アレルギーがあることを認識できないような場合は、学校側の責任は否定されやすい。
 また、給食における食中毒などの事案の場合、生徒が給食を食べないという自由が事実上ないことなどから、学校側には高度の安全配慮義務が求められ、また、食中毒などの事故が起こった場合は、学校側の過失が強く推定されやすい。 

<中学校における事例>
  ・心臓ペースメーカ使用中の生徒が体力測定中に突然死した事案
  ・ソフトテニス部のランニング中に心停止した事案
  ・野球部で遠投中に突然死した事案
  ・柔道部活動中、技を掛けられた際に後頭部を打ち死亡した事案
  ・柔道部活動中、投げ込みなど行った後、意識不明になり死亡した事案
  ・休憩時間中、追いかけっこしていた際ガラスにぶつかり死亡した事案
  ・校外での活動中、交通事故にあい死亡した事案
  ・体育でバスケットボール中、突然意識を失い死亡した事案
  ・水泳部活動中、プールの底に頭部打ち付け死亡した事案
  ・卓球部活動中、ランニング終了後に突然倒れ死亡した事案
  ・体育でランニング中に倒れ死亡した事案
  ・ドッジボール中に転倒し、けいれんを起こしその後死亡した事案
  ・体育祭の綱引き終了後倒れ、突然死した事案
  ・サッカーで他の生徒とヘディングで競り合った際、倒れ死亡した事案
  ・体育の走高跳の背面飛びの練習中に、マットから転落し死亡した事案
  ・理科の事件中、試験管が爆発し飛び散ったガラスで怪我をした事案
  
 中学校では、心身の成長に伴い活動範囲が広がるとともに、活動内容が高度し、事故の際の衝撃の強度も増すなど、学校活動における危険性も増加する。
 学校側の過失の認定においては、実際の指導方法がどのような根拠に基づいて行われたものなのかなどが問われることになる。
 一方で、生徒側には、小学生に比べて、ある程度高い危険回避行動が求められるため、生徒の行動が事故の誘因になっている場合、生徒側の過失が認定されやすい傾向にある。
 学校側が安全確保のために負う義務は、事前に注意する義務、指導中に注意する義務、事後措置を取る義務に分けることができる。それぞれの注意義務の程度は、行われる指導や活動がどの程度危険かなどによって異なってくる。
 危険な活動であれば、当然、その安全を確保するための注意義務も高度なものとなる。
 これらの義務のいずれかに違反した場合は、学校側の過失が認定されることになる。
 
<高等学校における事故>
  ・マラソン大会中の死亡事故
  ・球技大会のバスケットボール中、突然死した事案
  ・野外活動でカヌー実習中、転覆し溺死した事案
  ・ボクシング部活動中、頭部外傷による死亡した事案
  ・ヨット部活動中、衝突事故による死亡した事案
  ・野球部活動中、失明した事案
  ・体育の飛び込み試験中、プール底で頭を打ち死亡した事案
  ・体育でハンドボール中、ボールに指をぶつけ後遺障害を負った事案
  ・体育でバドミントン中、ラケットがぶつかり失明した事案
  ・実習でコンベアを使用中、右手が挟まり切断した事案
  ・突風で窓ガラスが割れ、外貌醜状の後遺障害を負った事案
  ・文化祭で合唱中に貧血を起こし顔面を強打した事案
  ・ホッケー部活動中、指がスティックにあたり切断した事案
  ・レスリング部活動中、頸椎を骨折した事案
  ・校外活動中、着火剤の使用を誤り火傷を負った事案

 高等学校での注意義務は基本的に中学校と同様である。
 もっとも、高校性は、中学生と比較して、心身が発達し、判断能力も高くなり、自主的に危険を回避する行動が求められるため、生徒の行動が事故の誘因になっている場合や積極的な危険回避行動が可能であるにもかかわらず取っていない場合には、生徒側の過失が認定されやすい。
 私立高校の場合、学校法人と個々の教員が責任を負うことになる。

<特別支援学校における事故>
  ・給食中、肢体不自由児が喉を詰まらせ死亡した事案
  ・校外活動で海水浴中に溺死した事案
  ・校外実習中、注意を受け混乱し、施設を飛び出し轢死した事案
  ・運動制限はなかった生徒が、運動中に倒れ死亡した事案
  ・トイレに入った後、意識を失い死亡した事案
  ・
 特別支援学校では、知的障害者や肢体不自由者に対する教育が行われる。
 学校側には、通常の安全配慮義務に加えて、それぞれの生徒の障害の特性を踏まえた配慮義務を負うことになる。
 自らの意思とは別に危険行動に出てしまう生徒もおり、学校側は、危険が生じないよう日頃から、十分な準備や配慮、指導などを行う義務が課されているといえる。
 障害の特性などに起因する事故の場合には、生徒側の過失が認めることは少ない。
 障害のある生徒が死亡した場合、将来得られたであろう収入の金額が問題となりやすい。なぜなら、知的障害などがある場合、障害のない労働者と比較して、低い賃金しか得られないなどの反論が学校側からなされるからである。
 このような主張を認めてしまう裁判例も多い(最低賃金に相当する額の収入しか得られないと認定することが多い)。
 このような障害がある者に対する社会的な格差を是認する損害の認定方法が正しいとは思えないが、現実の裁判では、それぞれの障害の程度等や実際の能力等を詳細に主張するとともに、就労可能な職種の将来的な広がりや賃金格差の是正可能性などを丁寧に主張する必要がある。
 
  
 <高等専門学校・大学における事故>

 高等専門学校や大学における事故は、主に、授業時間中の事故と課外活動中の事故に分けることができる。
 授業時間中の事故には、体育や実験等の授業・研究活動中の事故が多い。
 課外活動中の事故には、学生の自主的な研究活動やサークル、それらの合宿中の事故などがある。
 また、ハラスメント事案は、授業時間や研究活動中だけでなく、課外活動やそれら以外の時間等においても行われる嫌がらせなどを含む事案である。
 課外活動中の事故は、大学等の関与の度合いが低く、大学等の側の責任は限定的となる場合が多い。
 ハラスメント事案の場合、学校側ではなく、加害者個人に対する責任追及が行われることも多い。

 高等専門学校生には、年齢の低い生徒もいるが、高校生と同様に自主的な判断や危険回避行動が求められ、生徒側の過失が認定されやすい。
 大学生の場合、高校生と比べて、学生の判断能力は高く、様々な活動に自主性が求められている場合が多い。特に、サークルなどの学生が自主的に運営する活動の場合、大学側がそれを公認していたとしても、その個々の活動内容に関して高度の安全配慮義務が認められることは少ない。
 大学側の責任が認められるためには、公認のサークルなどが、違法な活動をしていることを認識しつつ、それを放置した結果、その違法な行為によって必然的に発生するような事故等が発生した場合など限定的なものとなる。
 
(おわりに)
 以上のように、学校事故において学校側の責任を追及する場合、学校側の安全配慮義務違反があったかどうかが問題となります。
 保育園、幼稚園、小学校、特別支援学校などでは、学校側に高度の安全配慮義務が求められる場面が多いといえます。
 一方で、大学では、学生の自主性が尊重されていることから、特に学生が自主的に運営する活動では、たとえ大学の教職員等が関与し、実際に参加していたとしても、学校側の責任は限定的なものとなります。
 以上の他、学校内で生じる出来事は、学校側に証拠が多く存在することになり、その収集が困難な場合もあります。
 たとえば、学校での食物アレルギーに関する事故の場合、学校側の認識を示す証拠として、学校にいつ、どのように生徒のアレルギー情報を伝えたかという記録が必要となります。
 普段から学校での出来事などを日々記録しておらず、学校側の協力が得られない場合、十分な証拠を集めることができないということも起こり得ます。
 それとは逆に、刑事事件に発展するような事故の場合、警察が証拠を収集し、その証拠を、民事訴訟においても利用できる場合もあります。
 刑事事件に発展しない場合でも、死亡事故などの重大な事故の場合、第三者機関等による検証が行わることもあります。またそのような検証を行うよう求めることも可能です。
 学校事故にあう確率は高いとはいえず、ほとんどの被害者・ご遺族にとって一生に一度の出来事であるといえます。どのように対応すべきか、少しでもご不安なことがあれば、出来るだけ早い段階で、弁護士に相談することをお勧めいたします。

被害者支援・法律相談

弁護士馬場伸城
弁護士 馬場伸城
第一東京弁護士会所属
犯罪被害者委員会委員

日本障害法学会正会員
日本建築学会正会員

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